院長の部屋 49号 今日よりよい明日はない
あの猛暑はなんだったのか・・・ と思うほどいっきに寒くなってきました。皆様、風邪などひいていらっしゃいませんか? 私は夏の疲れと気候の変化に体がついてゆかず、風邪気味で少々体調不良でしたが、あれこれ漢方薬を飲んではなんとか元気を取り戻しました。
そして、10月24日には地元の三谷祭の海中渡御で今年も山車を曳いて海に入ってきました。例年、三谷祭が終わると私にとって、一年の最終コーナーにさしかかったという気持ちになります。
これから年末に向けてなんとなく落ち着かなくなりそうですが、皮膚科医にとっての充電期間となる秋・冬には積んであった学術雑誌や資料に目を通し、研究会に積極的に参加し、人と会って話をして新たなる知識を得ようと思っております。皆様はどんな秋そして冬を迎えようとしていますか?
さて、鹿児島市で皮膚科医院を開業されている私の兄貴分である島田先生からエッセーが届きました。鹿児島県皮膚科医部会の会報に投稿したエッセーを電子メールで私に送ってくれたものです。題名は「今日よりよい明日はない」。著者玉村豊男の同名の新書が集英社新書からでていて、その本の内容を題材にかかれたものでした。共感することが多い内容だったので、早速この本を買って読んでみました。そしてなるほどと思うことが多く、是非皆さんにご紹介したいと思い、島田先生にご了解いただいて、私の今月のエッセーも「今日よりよい明日はない」と題しておおくりいたします。この本の中から一部をご紹介します。
団塊の世代を中心とするアラカン世代は、これから先にある20年の過ごしかたを考えなければなりませんが、若い世代の人たちも、最初から、少なくとも80歳までは生きることを前提として、人生の計画をたてなければいけないのです。(中略)
私たちがいま身を置いているのは、「すでに成熟した社会」です。(中略)
それなのに、いまだに若い頃の思い出にすがって昔にこだわっている政治や経済が、いまの日本を混乱させているのではないでしょうか。成熟の時代を生きるには、成熟した老人の知恵が必要です。血気にはやる青年が望む時代と、人の哀しみを知る老人が願う世の中とは異なります。(中略)
経済がどれほど下降線をたどろうと、世の中がどんなに悪い事ばかりでも、知恵のある老人は動じることがありません。なぜなら、彼らはいつの世にも悪い日があればよい日もあることを知っており、また、過去にあったよい日より、もっとよい日が未来にくる保証がないことも知っているからです。
そして今日を一日楽しく生きることができれば、昨日ほどよくなくても、それなりに悪くない明日がついてくることも知っています。
私が好きな、ポルトガル人に教わった言葉があります。「今日よりよい明日はない。」いい言葉だと思いませんか。今日よりよい明日はない、と思い定めれば、不確かな未来に心を煩わすこともなく、人生最高の日である今日を心ゆくまで楽しめばよいのですから。
以上「今日よりよい明日はない」より
この本を読んで、私は心が軽くなりました。些細な出来事の中にもささやかな喜びや楽しみをみつけて、今日一日がそれなりに楽しく過ごせたならそれを「幸せ」と感じる心。そんな心を持てたら、現代日本におけるストレス社会から少しでも解放され、生き生きとした毎日がおくれそうです。
そしてそれは自分の感じ方を変えるだけで、今日からでも楽しく幸せになれるような気がします。今日よりよい明日はない、と思い定めれば、毎日最高の今夜がやってくる。さしあたり今晩は島田先生から贈っていただいた芋焼酎を飲むことを楽しみに、今日一日を過ごそうと思っています。
この本の中にあった言葉を紹介して今月の締めとします。
未来を案ずる心は不幸である。セネカ「道徳書簡集」より
平成22年10月29日 院長