院長の部屋 57号 MAGIC HOUR
雨の日が続き、体調を崩しやすい時期になってまいりました。皆様、お元気でお過ごしでしょうか。東日本大震災から100日が過ぎましたが、日々伝わるニュースからは原発問題も含めて復興への道は険しいなーと感じています。政治家の方々には党派は超えての協力をすべき時に、内輪もめばかりしていて、この国のリーダー達はいったいどうなっているのかと不安と憤りそして諦めの境地にさえなってしまいます。本物の大物政治家の出現を期待したいですが、今の政治家の中にいるかな~。方向性さえ間違っていなければカリスマ性をもっていて、少しばかりワンマンなリーダーを私は期待しているのですが・・・・。
さてつい最近、とても素敵な写真集に出会いました。
「マジックアワー」吉村和敏 小学館。
「マジックアワー」とは、夕日が沈み、空に一番星が現れるまでの間。世界が最も美しく見える「魔法の時間」のこと。この写真集は日本も含めて、世界各地の「マジックアワー」に撮影された、風景の写真集です。何度見ても、うっとりして、心が癒されます。写真集の中に挿入されていた文章とあとがきから撮影者の想いを抜き出してみます。
夕日が沈んだ直後から、空に一番星が現れるまでのわずかな時間を、マジックアワーと呼ぶ。地上から影が消え、風も止み、淡い光の粒子につつまれたすべての風景が、いつしか最も美しい姿に生まれ変わっている。確か子供のころ、5時のチャイムが聞こえ家路を急ぐ時間だった。心の片隅に潜むなつかしい思い出が、夕空を眺めていたらフッと蘇ってきた。
西の空に、白い雲が流れてきた。
今日は夕焼けが出るのだろうか・・・・。撮影の手を休め、天を仰ぎ、そんな光の変化に想いを馳せるひとときが好きだ。やがて太陽が姿を隠す。しばらくは何も起こらない。数分後、前触れもなく雲が燃えた。神様から届く一つのメッセージ。長い旅の途中に出会った大切な人たちも、きっと今、空を見つめているだろう。
冬枯れした木立ちのむこうに、別世界を見た。いつもこの道を歩き、繰り返し目にしている空なのに、今日のスクリーンは何かを物語っている。異国にいて、美しさで心が満たされるとき、次はいつ、この光景に出会えるだろうかと考える。
マジックアワー この儚い時間を好きになってから、明日という日が待ち遠しくなった。
マジックアワーは、もう何年も前から映画関係者の間で話題になっていた。やわらかな光につつまれたこの時間帯にカメラを回すと、照明装置を使わなくても、人物や風景を劇的に美しく見せることができるのだ。
(中略)この儚い時間帯、まぶしい光がないので、すべての風景が静寂の中に沈んでいる。私はマジックアワーに抱かれると、目の前の風景とじっくり向かい合うようになる。風や、音や、香りなど、普段気がつかなかったことを意識するようになり、いつしかカメラを構え、シャッターを切っている。私は祈るような気持ちで写真を撮りながら、やはり一日の中でマジックアワーの時間帯が一番好きだと思った。(MAGIC HOURより)
どんよりと曇り、雨が続くこんな時期だからこそ、美しい風景が恋しくなります。
私がまだマジックアワーという言葉を知らなかった高校生だった頃、竹島を望む地元の堤防に佇んで、夕日が沈み、三河湾を真っ赤に染め終わった後の優しく美しい赤みから紫色に変化する空と海の風景を、何度も見に行ったことを思い出します。私の胸の中にしまってある故郷の原風景はマジックアワーに眺めていた三河の海と空なのだと思います。
世界中どこにも平等にやってくるマジックアワーが、大震災被災者の方々に故郷復興のパワーを与えてくれることを信じています。あなたにとって思い出のマジックアワーありますか?
平成23年6月22日