院長の部屋
COLUMN

院長の部屋 62号 匂いと心

寒くなってまいりました。皆様におかれましては、いかがお過ごしでしょうか。大震災の傷跡癒えぬまま、今年も残すところあと少しとなりました。「絆」をキーワードに今年は本当に大切なものを再認識させられる1年となりました。「震災の復興なくして日本の明日はなし」と強く感じています。日本人が一丸となって復興に取り組んでゆかなければと感じています。

さて11月に東京で開催された日本アロマセラピー学会総会に参加してきました。今回の学会で印象的だったのは長崎大学の篠原一之教授による「情動を動かす匂い」という講演でした。その中から抜粋してご紹介します。

人類は胎児期(まだお母さんのお腹の中にいる時)から匂いに情動を動かされ始めます。妊娠7か月の胎児は既に嗅覚も大人並みとなっています。味は味覚と嗅覚から感知するので、匂いは味にとって重要な要素となります。母親の食べた物や飲んだ物、タバコなどの匂いが羊水に運ばれて、胎児はその匂いを「お袋の味」と認識し、胎児はそれを「良いもの」として認知するそうです。妊娠中~出産期の味は赤ん坊にとって「安心する味」「懐かしい味」となるのです。そのため母親が妊娠中にファーストフードを沢山食べたり、ビールやコーラを飲んだり、タバコを吸っていると赤ん坊はそれらを懐かしいお袋の匂い・味と認識し子供にとって「良いもの」として脳に記憶されてゆくそうです。それゆえ母親自身の食生活や飲酒・喫煙は、生まれる前から子供の嗜好性を左右してしまうのです。

新生児は生後1時間以内に母親の下腹部に乗せると1度も経験がないのに母親の体をよじ登り乳首を吸いつく(Breast Crawl)本能があり、これは乳首から発する匂いに引き寄せられるとのことです。また、母乳の匂いは乳児の痛みに対するストレスを軽減する作用があります。乳児が痛み刺激を受けて泣いている時、実母の母乳(他人の母乳ではダメ)の匂いを嗅がせると泣いている時間が短縮するというデータを示されました。匂いと心、そして行動ってこんなにも深く関わってくるものなのです。

母親における匂いの研究では、自分の子供と他人の子供を匂いで区別でき、自分の子供の匂いを嗅ぐと心地よさを感じ、やる気がでてくるそうです。他人の子供からでも母親は母性や幸福感を感じ、不安感が和らぐというデータも紹介されました。難しい言葉になりますが、「乳児の匂いは母親の情動を動かし、母親特異的に報酬系脳部位を活性化させる」ということです。脳はホルモンに暴露されて変化しますが、妊娠・出産・授乳により関連ホルモンが出てきて脳が「お母さんの脳」に変化するのです。ここで若い女性の皆さんに対して私から希望することは、結婚して子供を産んで「お母さんの脳」に変化した女性に増えてほしいということです。そして母親になることで自分の子供のみならず他人の子供からも母性や幸福感を感じ取れる日本女性に是非なっていただきたいと思うのです。あなた自身のため、そして未来を創る子供たちのために。

子供の好きな匂いを調べた研究では好きだった匂いは順に(1)家の匂い(2)少年の匂い(3)少女の匂い(4)女子大生の匂い(5)高齢男子の匂い(6)高齢女子の匂い(7)男子大学生の匂いの順になりました。つまり子供は家の匂いが一番好きで、男子学生の匂いを「クサイ」と感じるのです。一方で抑うつ気分と匂いの研究ではダントツ1位で高齢女子、つまり「おばあちゃん」の匂いで抑うつ気分が改善される結果でした。つまりおばあちゃんの匂いは子供の抑うつ気分を軽減し、癒す効果があるのです。辛いことや悲しいことがあった時に、孫は祖母の元へ行くと癒され元気になるのです。

匂いが日々の様々な場面で心を動かし、行動を左右することを医学的データが実証しています。そして香り、匂いが生活や医療の分野で正しく理解され、より有効に活用されることを期待したいと思います。

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