院長の部屋 68号 第111回 日本皮膚科学会参加記
東海地方も梅雨入りし、ジメジメした日がつづきそうです。皆様におかれましては、いかがお過ごしでしょうか。皮膚科診療の現場では、例年のごとくこの時期は毛虫の毒針毛による毛虫皮膚炎が流行しています。そして、水虫が目を覚まし、トビヒや水イボも増える季節です。悪化する前に早めの治療をオススメします。
さて、6月初旬に京都で第111回日本皮膚科学会総会が行なわれました。昨年は大震災の影響で本総会は中止されました。それ故、2年ぶりの総会開催ということで、発表する側も聴講する側もとても楽しみにしていたと思います。私も例年のごとく参加してまいりましたが、その中からほんの少し、参加記として綴ってみたいと思います。
(1)疥癬(かいせん)の診断と治療:「目からうろこの疥癬事情」と題して、“疥癬”(ヒゼンダニの寄生によるとてもかゆく伝染する皮膚病)といったら赤穂市民病院の和田康夫先生といわれるほど、疥癬通の先生の講演でした。先ごろ蒲郡近辺で疥癬が流行した介護施設があり、それ故に疥癬の最新事情をおさらいするために聴講してきました。数年前から疥癬に適応となったストロメクトールという内服薬が使えるようになったので、治療に関してはとても進歩しましたが、国内では塗り薬に特効薬がなく、現在その研究を進めていることを聞いてきました。
(2)ダーモスコピー アドバンストコース:私が右の腰につけている印籠のような入れ物から時折出しては発疹を見ている道具がダーモスコピーです。皮膚科の聴診器とも言われる道具で、肉眼では判別できない多くの情報を得ることができます。皮膚癌か普通のホクロか、毛細血管の状態、イボの治り具合、脱毛症の種類判別や程度のチェックなど様々な場面で大いに役立つ皮膚科診療になくてはならない道具です。この道具が世の中にでてまだ10数年のため、大学病院の専門の先生方がダーモスコピーを使って発疹を診る技能をここ何年も競って発表されてきました。今回のセミナーでは5人の先生によるダーモスコピーを使った皮膚病の見方の講演を聴き、当院における日々の診療に役立つ内容を勉強してきました。
(3)ターゲット型光線療法―308nmエキシマライト:当院で稼動しているセラビームという最新光線治療機器についての最先端の治療効果の知見を聞いてきました。まだまだこの機器は世にでて間もないので、治療法も流動的で名古屋市立大学皮膚科を中心にエキシマライトの効果的な使用方法や皮膚疾患別の治療プログラムを日々研究しているようです。当院でも常に最新の知見に基づいて治療を進めてまいります。
(4)最新のスキンリジュビネーション:スキンリジュビネーションというと難しく聞こえますが、「しみ、しわ、たるみ、皮膚のキメ、にきび痕」などをきれいにしたり蘇らせたりするレーザー治療分野の講演です。この分野はここ20年の間に目まぐるしく進歩しており、機器メーカーがこぞって競争して新しい機器を開発しています。また、自己血の血小板をしわに注入してしわ伸ばしをしたりと驚くような治療が普通に行なわれるようになりました。美容皮膚科分野はこの分野に特化した皮膚科医や美容外科医でないと手がだせるような分野ではないな~と再認識してきました。美容を専門としない皮膚科医の私は現在、美容皮膚科でどのような治療ができて、どこで施術を受けられるかといった情報を提供できるように勉強してきました。
学会や研究会で最新の情報を得て、地方の田舎都市の蒲郡でも可能なかぎり、精一杯の皮膚科診療を追求してゆきたいと思っています。
平成24年7月