院長の部屋 77号 食物アレルギーup to date
三寒四温、春がやってきた!と思っていたら、急に寒くなったりして、体調を崩しやすい季節です。屋外で思いっきり活動したくなる季節なのに、花粉、黄砂、紫外線・・・外に出ると目に見えない外敵に襲われ、顔や目がかゆくなったり鼻水、くしゃみがでたり、少々憂鬱な方も多いのではないでしょうか。まずはスギ・ヒノキ花粉が飛散するこの季節を早く乗り越えたいですね。
さて、4年前から毎年3月に名古屋において「食物アレルギーセミナー・あいち」という医療従事者向けの食物アレルギーの勉強会が開催されています。私は毎年このセミナーに参加してきましたが、第5回目となった今回、本国の食物アレルギー研究の第一人者である相模原病院の海老澤元宏先生の講演が予定されていたので、予約なしで来場した当日参加の方は会場に入れなかったほど盛況でした。このセミナーに参加して毎年感じることは、食物アレルギーに関する知識や治療方法が年々目まぐるしく進歩しているということです。検査方法、治療方法、予防方法、緊急処置方法などが年々改良されてきているのです。ですから古い知識での検査や指導を受けられると、必要もない食物除去や食事制限を続けていたり、いつか治る(寛解)はずのアレルギーがなかなか治らなかったりすることもあるのです。
幸い、地元の蒲郡市民病院小児科は食物アレルギーに積極的に取り組まれていますし、いざとなれば大府にある「あいち小児保健医療総合センター」にアレルギーのプロフェッショナル伊藤浩明先生がいらっしゃるので、この地域は食物アレルギーに関するかぎり本当に恵まれた環境下にあります。
では、思いつくままに最近の知見をご紹介します。
(1)乳児の口囲のジクジクしたタダレがあると、そのただれた皮膚から食べカスが吸収されて食物アレルギーになりやすいので、乳児の口囲の湿疹は軟膏治療でしっかりと治療すべきであること。
(2)食物アレルギーで大切なことは不必要な食物除去をしないこと、つまり食物制限を最小限にすること。そのために、実際にどれくらい食べることができるかの検査(食物経口負荷試験)を行うこと。
(3)アレルギーの程度により「アレルギーのある食物」を毎日食べ続けて治す「経口免疫療法」が最先端の施設で行われていること。
(4)最初に花粉症が発症して、花粉(種類による)によって全く別の食物アレルギーが生じるケースがあること。
(5)食物アレルギーのある児童にアレルギー発作が生じた時、エピペンというアドレナリン自己注射薬が保険適応で処方されること。
(6)妊婦さんや乳児が食物アレルギーにならないように予防的に卵やミルクを除去する必要はないこと。以上の他にも様々なことが詳しくわかってきて、実践されるようになってきました。
特に実際に食物アレルギーのある方には、「国立病院機構相模原病院臨床研究センター」または「食物アレルギー研究会」のホームページからダウンロードできる「食物アレルギーの栄養指導の手引き2011」に何をどのように食べてよいのか、いけないのかが詳しく書かれているので一度ご参照ください。
医学・医療は不完全なもので、わからないこと、治せない病気もまだまだ沢山ありますが、食物アレルギーに関しては日々研究が進んでいます。地方小都市の蒲郡でも、最新情報をいち早く皆さんに提供することが私の使命だと思っています。少しでも地域医療に貢献できますよう、今後とも精進してまいります。
平成25年3月28日 院長