院長の部屋 82号 風光海癒し~奄美から
9月下旬から毎週のように台風がやってきてはあちらこちらで猛威をふるって過ぎ去ってゆきます。当院も野立て看板が台風26号によって倒れてしまいましたが、皆様におかれましてはご無事でしたでしょうか。10月にしては暑い日が続きましたが、台風が過ぎゆくたびに秋が深まってゆきます。今年も残すところ2か月余、本当に月日の過ぎゆくのは早いものです。
さて当院にご来院された方はお気づきかとは思いますが、院内のあちらこちらに絵画を展示しております。学生時代から外国へ行った際に少しずつ私が買い集めた絵、開院の際などにお祝いに頂いた絵、そして奄美大島の画家岬眞晃(みさきしんこう)さんからお譲りいただいた絵などが中心となっています。数か月毎に展示の入れ替えをしていて、絵の好きな方からは「いつもここに来るたびに絵が替わっているので、それを楽しみにしているの」などとお声をかけていただくこともあります。今回は、当院のイメージ「風、光、海、癒し」をテーマに、「岬さんの描かれる絵との出会い、そして今」について書き綴ってみます。
平成10年4月から12年3月までの2年間、私は鹿児島県の奄美大島にある県立大島病院へ皮膚科部長として赴任していました。当病院に皮膚科医は私一人だったので、仕事は結構忙しかったのですが、なによりも真っ青な海に囲まれ、原生林の森が残る奄美大島での生活は、私の人生の中の1ページとして忘れ難き大切な思い出ばかりが心の中に残っています。
平成12年に入り奄美大島を離れる直前の頃、街中で開催されていた絵画の個展にフラーっと立ち寄ってみました。その個展は奄美大島在住の画家岬眞晃さんが開かれていたもので、奄美の自然を題材に描かれた絵画を中心に展示されていました。多くの絵画の中から、私たちの目を引いたのは「森の中の一本の大木」の絵でした。「奄美12か月」という12作品のシリーズの「皐月」という作品で、「徳之島伊仙町ウラジロガシの森」が描かれたものです。気まぐれで立ち寄った個展だったので、絵を購入しようとは考えていなかったのですが、奄美大島で2年間過ごした思い出として、そしていつか開業した際に医院に展示することを念頭に、思い切って「皐月」を購入することにしました。
そして平成13年5月24日海岸通り皮ふ科開院。医院正面玄関を入った真正面を飾ったのは「奄美12か月シリーズ皐月」の何とも言えない癒しを与えてくれる一本の大木の絵。この絵が開院した5月と同じ「皐月」という名で、そして5月は私の誕生月でもあるこの偶然。「皐月」には奄美の思い出と、それ以上に開業当時の様々な想いが一杯詰まっています。
そしてその後、岬さんとは「皐月」とのご縁でメールや手紙でお付き合いが続き時折、作品を譲っていただいています。現在、岬さんの描かれたいくつもの作品を収蔵しておりますが、どの絵も「風、光、海」を感じさせ、何より岬さんの絵を見ていると癒されます。アダン、ガジュマル、ハイビスカス、渓流、海岸、灯台、海に浮かぶ小島、夕焼けに染まる海・・・それらは奄美で目にした自然や、かつて訪れた思い出の地ばかり。その思い出の風景画を目にして幸せを感じながら診療しています。
私が当院を開業する際に医院のイメージコンセプトとしたのが「風、光、海、癒し」でした。そよぐ海風、待合室に降り注ぐ光、芝生広場越しに望む三河湾、そして癒しのための絵画をはじめとした空間作り。その中で岬さんの描く絵が「風、光、海、癒し」そのものを感じさせてくれます。当院のイメージにマッチした癒しの絵の数々。当院へお出で下さる皆様に「風、光、海、癒し」を感じていただけたらなら私としてはとても嬉しく思います。
「風、光、海、癒し」~奄美から