院長の部屋 83号 中部支部学術大会に参加して
今年も残すところあとわずかとなってしまいました。2013年、皆さんにとってどんな一年だったでしょうか。年頭にたてた目標は達成できましたか?終わりよければすべてよし、楽しく有意義に師走を過ごせたらいいですね。
さて11月2~3日に名古屋国際会議場で第64回日本皮膚科学会中部支部学術大会が開催されました。本学会の会長は私がかつてお世話になった藤田保健衛生大学教授の松永佳世子先生で、学会テーマは「早く、きれいに、親切に、適切な医療費で治す ~ 皮膚科のQuality Indicator(QI) 医療の質を考えよう」でした。「医療の質」… 大学病院、地域の基幹病院(市民病院など)、開業医でそれぞれできることが異なってきます。大学病院でも病院によって特殊な専門領域がありますし、開業医でも医師の力量に差があります。そんな中でそれぞれが「医療の質」を高める努力をしなければならないのですが、現在の段階で各皮膚疾患における「医療の質」について、各々の分野の専門家が担当して29のセッションに分かれて発表がありました。そして私もいくつものセッションを聴講して、多くのことを学んできました。
今回の学会では土曜日の夕方から日曜日の午後までに「皮膚アレルギーの最新情報」「膿疱性乾癬に対するアダカラムの最適化を求めて」「皮膚アレルギーをめぐる『とっておき』の話題」「皮膚真菌症 とっておきの話」「QI 光線過敏症」「QI ざそう、酒さ、酒さ様皮膚炎」「QI 尋常性白斑」「QI 褥瘡」「アトピー性皮膚炎治療の最前線 これからのステロイド外用療法を語る」と休む暇なく貪欲に教育講演を聴き、最新情報を得てきました。
皮膚アレルギー関連の話題の中でトピックスになっているのが食物アレルギーの経皮感作(けいひかんさ)の問題です。経皮感作とは皮膚の表面から様々な物質がしみ込んできて、食物アレルギーになってしまうことです。「お茶のしずく」という石鹸に含まれていた小麦の成分によって、小麦アレルギーになってしまった重大な社会事件がありました。その後、赤ちゃんの頬のジュクジュクした湿疹を放置してその湿疹に食べカスが付着すると食物アレルギーになりやすことが判明してきたり、口紅や化粧品などに含まれるコチニールという赤い色素が皮膚から侵入して感作されると、コチニール入りの赤い色素を使ったソーセージ、イチゴジャム、赤い色のジュースなどを飲食してアレルギーが生じることがあることがわかってきました。
蒲郡という地方小都市で開業する皮膚科医として私にできること・・・診療能力を常に磨きをかけ、自分の持てる力を100%発揮して、質の高い皮膚科診療を提供すること。そんな目標を常にかかげて学会や研究会に出かけ、田舎にいてもできる限り最先端の知識を持って、患者さんにより良い医療を提供してゆきたいと改めて強く感じてきました。
先日、患者さんから一通のお葉書をいただきました。長らく慢性の皮膚病で当院へ光線治療に長年通院された方です。「○○の事情で通院することが難しくなりました。先生を始め、スタッフの皆様にとても気持ち良く接していただき、おかしなことですが、伺うのが楽しみのほどでした。本当にありがとうございました。(以下省略)」と綴られていました。患者さんから、このようなお葉書を頂いたり、言葉をかけて頂いた時が、海岸通り皮ふ科メンバーにとって何物にも代えがたい、一番嬉しい瞬間です。振り返れば今年一年色々ありましたが、このお葉書をいただいて、この年の暮れに元気と勇気を与えていただきました。「終わりよければすべてよし」暖かい気持ちで師走を過ごせそうです。