院長の部屋 88号 鉄ちゃんの旅
この連休を使って会津若松、越後湯沢方面へ鉄道の旅にでかけてきました。鉄道好きの相棒と二人で「乗り鉄」・・・二泊三日の「鉄ちゃんの旅」です。
最寄り駅を始発列車に乗り、豊橋始発の新幹線へ乗り換えます。好天に恵まれ気持ちのよい出発です。東京で東北新幹線に乗り換え、あっという間に郡山に到着。郡山から磐梯山を望み福島の自然の中を会津ライナーで快走します。福島県内陸部の郡山や会津若松では見る限りにおいて東日本大震災の爪痕を感じることなく、私たちのような通りすがりの旅人には、人々の抱える悲しみやご苦労を感じる間もなく過ぎてしまいました。さて小一時間で会津若松に着きました。会津若松では乗継に4時間あったので少しのんびり散策できるかと思いましたが、4時間なんて本当にあっという間に過ぎ去ってしまいます。白虎隊が飯盛山から鶴ヶ城を眺めた場所でひととき佇み、白虎隊の少年兵に思いをはせ、現在こうして平和な日本で生活できる幸せをかみしめてきました。
さあ会津若松から今回の旅のメインイベント「SLばんえつ物語号」という蒸気機関車に乗り込みます。磐越西線の会津若松と新潟を結ぶ「森と水とロマンの鉄道」です。まさに森と水を感じる風景の中を蒸気機関車が駆け抜けます。昨日までGWさなかの喧騒の中、医院で診療していた自分が非日常の時間に解き放たれてゆきます。こんな時間があるから、また元気を取り戻して頑張れるのだと思います。鉄ちゃんの旅、第一日目は阿賀野川沿いの津川にある麒麟山温泉に宿をとりました。5月3日まさにその日、宿泊地の津川では「狐の嫁入り行列」というイベントが開催されていたのですが、SLに乗ることを優先したため、せっかくの名物イベントを見るタイミングを逃してしまいました。
二日目は磐越西線、信越線、上越線とローカル列車を乗継ぎ津川から越後湯沢までの旅程です。乗継ぎのため、知らない町の駅でぼーっと文庫本読みながら列車を待ったり、見知らぬ小さな駅前のラーメン屋でラーメン食べたり、こんなに平和で穏やかな時間を過ごせることはとても贅沢なことなのかもしれないって思います。ローカル列車の車内は部活帰りの地元の高校生や、ちょっと町まで出かける老夫婦など日常の世界にいる人々と、我々のような非日常の世界にいる旅人が交錯する空間です。そんな空間が私には心地よく、しばらくこんな心ときめく時間が続いて欲しいと願いながらも二日目の目的地越後湯沢に到着しました。越後湯沢は「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」という冒頭の文章で有名な川端康成の「雪国」の舞台となった地です。そして川端が「雪国」を執筆するために逗留していた宿「高半」に、二日目の宿をとりました。残雪残る山々を望む丘に位置して、いいお湯の宿でした。
旅三日目の最終日は越後湯沢から上越線、長野新幹線、小海線、中央線、身延線、東海道新幹線、東海道線とあわただしく乗継いで蒲郡まで帰る予定を組みました。小説「雪国」に出てくる「国境の長いトンネル」の清水トンネルを通り、JR最高地点の野辺山を通る小海線を経由する、まさに鉄ちゃんの旅最終日。小雨混じりの一日で高原を走る小海線の景色もどんよりして少し物足りなかったけれど、この3日間列車の遅れもトラブルもなく予定通り無事に蒲郡に帰り着きました。
GW五連休、長らくお休みいただいたため、連休後の診療は多くの患者さんにおいでいただき、旅の余韻に浸る間もなく、いつもの日常の生活に戻っています。皆さんはこのGW、心に残る思い出をできましたか?
平成26年5月 院長