あの日のワンショット「(18)ドイツ ハーメルン」
大学2年生の夏。50日間のヨーロッパ一周の一人旅も後半に、西ドイツを駆け足でまわった。まだ西ドイツと東ドイツに分断されていた時代だ。スイスから西ドイツのミュンヘンに入った。ミュンヘンでは街のビアハウスで巨大なジョッキでビールをしこたま飲み、巨大なドーム状のテントに宿をとり、多くのバックパッカーと共にシュラフにくるまって夜を明かした。ミュンヘンで数日過ごした後、足早にバスでロマンチック街道沿いの街に立ち寄りながら北上し、もっと寄ってみたい街は色々あったが、日程の都合だったのかグリム童話で有名な「ハーメルンの笛吹き」の舞台となった街「ハーメルン」で一泊することになった。ハーメルンには夕方に着いたが、既に多くの店は閉店していて、観光客も住民も街を出歩いている人はとても少なかった。ドイツの小都市の風情を感じながら、ヨーロッパの日の長い夏の暮れの街を一人散策した。写真は「ハーメルンの笛吹き」の像と「木組みの館」である。その日の宿をユースホステルにとり、夕食は街の小さな食料品店で果物やパンなどを買って一人ユースホステルで食べた記憶が残っている。ここハーメルンではずっと一人で、誰かと語り合ったとかの思い出はなく、「静かに暮れて行く、うっすらと寂しさの漂うドイツの夏を異邦人が風のように漂っていった」と表現すると、その時の私の感じた情景を表すことができるだろうか。夕暮れ時の弱い日差しに包まれて、ドイツの小さな街の食料品店で買った食料を手に提げて一人ユースホステルに帰ったあの光景が私の旅の記憶の中でも不思議なくらい今でもとてもセンチメンタルに思い出される。